導入事例

円滑移行を支えたその技術力 製造業の基幹システムを「次世代仮想化基盤」で刷新(株式会社小松精機工作所様)
ビジネスを取り巻く環境が激しく変化する昨今、ITインフラの刷新は従来以上に慎重に進めねばならない。とりわけ基幹系のリプレースには中長期的なIT戦略に加え、移行を伴走支援するパートナーと確かな技術力が求められる。
経営方針にDX推進を掲げる長野県諏訪市の小松精機工作所は、基幹システムのサーバ更新を機に新たな仮想化基盤へと移行した。今回の取材では小松精機工作所、導入を支援したソレキア、エフサステクノロジーズの鼎談を通じて、次世代の仮想化技術がもたらすインパクトを紹介する。鼎談のモデレーターは、日経BP 総合研究所の林哲史が務めた。

5年ごとの更新サイクルでNutanixが候補に浮上
林哲史氏(以下、林) 小松精機工作所はどのような事業を展開しているのですか。
飯島将太氏(以下、飯島) 2025年6月に創業72年を迎える当社は各種精密加工部品の製造を得意とし、自動車、腕時計、医療機器、情報機器など幅広い分野に部品を供給しています。日本のみならずタイにも生産工場を持ち、ガソリンエンジンのインジェクタ部品は世界シェアの40%以上を生産。デンソーやボッシュなど世界各地の自動車部品メーカーに納入実績があります。

株式会社小松精機工作所 管理部 システム開発課 課長
林 以前から基幹システムのサーバ仮想化に取り組んできたそうですが、その背景を教えてください。
飯島 基幹システムの安定稼働と運用効率の向上を目的に、早期からサーバ仮想化を推進してきました。具体的なメリットはリソース最適化、運用管理の簡素化、拡張性の確保の3点です。
我々は5年ごとのサーバリプレースサイクルを設定しており、2024年がちょうどそのタイミングでした。従来の運用を見直した結果、このリプレースにおいてコスト最適化、運用負荷の軽減、障害発生時の早期の復旧が課題やニーズとして挙がりました。これらを解決するために、以前から関わりの深いソレキアに相談しました。
林 小松精機工作所とソレキアとの関係はいつから始まったのでしょうか。

日経BP 総合研究所 フェロー
中島司氏(以下、中島) ソレキアの諏訪支店は約40年前に設立され、出店直後にオフィスコンピュータを導入いただいて以降、営業、SE、CEが三位一体で小松精機工作所のIT化をサポートしています。オフコン時代から一貫して基幹サーバはエフサステクノロジーズ製品を採用いただいており、今回の更新でもエフサステクノロジーズの支援をいただきながら提案しました。
当初は既存の仮想化基盤ソフトウェアでの単純リプレース提案を想定していましたが、ライセンス体系の変更やベンダーの販売方針の変更などに伴い、社内SEやエフサステクノロジーズと検討し、代替案としてNutanixへの移行を提案しました。

ソレキア株式会社 東日本支社 信越営業統括部 諏訪支店長
林 エフサステクノロジーズはソレキアに対してどのような支援を行ったのですか。
藤井俊一氏(以下、藤井) まずはNutanixへスムーズに切り替えるため、移行手順の提示、検証環境の提供、QA対応を含む検証支援などの移行支援を実施しました。2つ目は一層セキュアな仮想環境とするためにバックアップシステムを見直し、より堅牢な「Veeam」の導入に向けて、ハンズオンセミナーや技術面で支援しました。ランサムウェアはバックアップデータまで暗号化する危険性がありますが、Veeamによるデータ保護はランサムウェア対策としても非常に有効だからです。

エフサステクノロジーズ株式会社 アライアンス事業推進室 シニアマネージャー
段階的なスケジュールと慎重なリハーサルで安全な移行を実現
林 リプレースを検討する中で、小松精機工作所が重視されたポイントはどこですか。
飯島 リプレース後もシステムの安定性を維持し、なおかつ性能を向上できることが必須条件でした。ただしシステム停止の影響を最低限に抑える必要があるため、円滑に既存環境を移行してほしいと依頼しました。そこで3カ月前に詳細設計と段階的な移行スケジュールを策定し、重要な仮想サーバを優先的に移行することで業務に影響が及ばないように配慮していただきました。
さらに1カ月前からは社内でNutanix環境を構築して、社内業務に影響がない範囲で既存の仮想環境へ移行。システム動作に問題がないかどうかの運用テストを繰り返したうえで本番環境へと移行しました。移行期間はソレキアと話し合いながらそのつど問題点を解決しながら進めましたが、完了後も動作確認を徹底し、安定運用を確保しています。こうした慎重なプロセスを踏むことで、社内インフラへの影響を最小限に抑えながら安全な移行を実現しました。

中島 我々はエフサステクノロジーズと連携して入念な移行リハーサルを行いました。導入時にはエフサステクノロジーズによる「アセスメントサービス」や「HCIスタートアップサービス」を活用し、スケジュールを守りながら確実な移行を支援できました。

藤井 仮想化基盤の導入において重要なのは、企業のIT戦略や投資計画と、現場が必要とするリソースを整合させることです。当社のアセスメントサービスを活用することで運用中サーバのリソースの使用状況だけではなく、日常の運用で見落としがちなシステム上の懸念事項についても可視化・分析し、お客様の計画も踏まえて的確にサイジングすることができます。
また、仮想化基盤はあくまでも業務システムを支える基盤ですから、そこに工数を割かれてはいけません。初期構築を代行するHCIスタートアップサービスを利用すればNutanixを初めてご導入のお客様でも容易に環境を準備できるので、SEの負担軽減やシステム全体の移行スケジュール短縮にもつながります。
Made in JapanとMade for Japanがエフサステクノロジーズならではの強み
林 仮想化基盤の移行先としてNutanixを選択する理由やメリットについて、改めて藤井さんから教えていただけますか。
藤井 主に3点あります。1つ目はシンプルに運用できること。Nutanix独自の運用ツール「Prism」によってハードウェア/ソフトウェアの一括管理、無停止ローリングアップデート/増設などが可能になります。2つ目は無償移行ツールの「Move」によって簡単に既存の仮想環境から移行できること。3つ目は仮想化基盤以外の機能が充実しており、ディザスタリカバリ、ファイルサーバの統合・管理などもNutanixで完結可能なこと。これらをメリットと考え、当社のNutanixソリューション「PRIMEFLEX for Nutanix Enterprise Cloud(以降、PRIMEFLEX for Nutanix)」を提案しました。

林 PRIMEFLEX for Nutanixの特長は。
藤井 1つ目は「Made in Japan」の品質です。PRIMEFLEX for Nutanixで採用するサーバのPRIMERGYは部品受け入れ検査、CPU組み込み、装置組み込み、最終組み立て、出荷試験までを福島県伊達市で実施し、安心の日本品質を担保しています。加えて日本のビジネス習慣やオフィス環境を意識した「Made for Japan」もこだわりの1つです。
2つ目は安心の国内サポート体制です。国産ベンダーとしての強みを活かし、サポートセンターと全国のサービス拠点とのスムーズな連携によって、業界最高水準の2時間以内※のオンサイト修理を実現しています。
※:サーバを「SupportDesk Standard」で契約した場合の目標値。対応時間はご契約内容により異なります。
林 充実した仮想化基盤への移行によって、小松精機工作所でも今後への期待が大きいのではありませんか。
飯島 そうですね。ゆくゆくはハイブリッドクラウド環境として、さらに柔軟かつ効率的、それでいて運用負荷が少ないITインフラを構築したいと考えています。例えば社外から安全に社内データにアクセスできるようになれば営業効率が向上するなどの効果が考えられます。
林 確かにクラウドとオンプレミスを組み合わせることで、さまざまな可能性が広がると思います。藤井さんはお客様からのこうした声をどう捉えていますか。
藤井 お客様によっては社内の大事なデータをインターネット上に出したくないとの希望が根強くあります。オンプレミスの環境を維持しながら、一方ではITインフラの最適化のためにクラウドのように利用したいニーズが高まっているのも事実です。そうしたお客様に対し、エフサステクノロジーズでは「uSCALE サブスクリプションモデル」を用意しています。月額制で使った分だけを支払い、リソース増強にタイムリーに対応可能。オンプレミス環境でありながら「所有」から「利用」へというクラウド同様の課金体系を実現しています。
信頼できるパートナーと綿密な計画が成功の鍵
林 最後に本プロジェクトを振り返っての感想、DXに取り組まれる担当者に向けてのメッセージをお願いします。
飯島 仮想化基盤の切り替え後も安定的に稼働することが大前提でした。当初はNutanixへの切り替えがどの程度影響を及ぼすのか、もしかしたら上手く移行できずに環境を作り直すことになるのではないかとの不安もありましたが、実際の移行はスムーズに行われ、完了後も安定して稼働しています。また管理ツールのPrismは以前のツールと比べて直感的に操作ができ、運用における負荷が大幅に下がりました。大規模なインフラの移行には心配がつきものですが、信頼できるパートナー、そして綿密な計画のもとで実行していくことの重要性を改めて感じました。
中島 小松精機工作所の基幹システムの安定稼働に寄与できたことは大変光栄です。仮想環境やサーバインフラ、ネットワークインフラなどはもともと得意としてきましたが、Nutanix導入によって新たなSEのスキルや営業のナレッジを蓄積できたことも収穫です。今後も地域に根ざし、身近なパートナーとして変わらぬ支援と時代に即した提案を続けていきたいと思います。
藤井 ハードウェア、ソフトウェア両面に加え、技術支援の面でもソレキアと小松精機製作所を支援できました。当社の強みは品質へのこだわりと充実したサポート、そしてお客様とプロダクトの双方を理解できる技術部隊の存在です。これからもお客様に安心してお使いいただけるプロダクトの提供や技術支援を続けていきます。
林 日本には、小松精機工作所と同じ状況の企業は数多くあると思います。ITインフラの刷新は大きなテーマですが、信頼できるパートナーとともに臨めば今回のように成功すること間違いありません。本日はありがとうございました。

お客様情報

株式会社小松精機工作所
半世紀以上にわたる腕時計部品製造で培った高品質・微細精密加工技術を基盤とし、精密プレス部品一貫製造、各種精密機械部品製造、難削材の切削・研削加工等の事業を展開。
腕時計部品メーカーから電子部品、IT機器部品、医療機器部品そして自動車部品へ常に未来を創造し時代を生き抜く企業として成長を続けます。
本記事は、日経BP社の日経クロステック Activeに掲載された記事を許可を得て転載しております。
・出展元:日経クロステック Active
・記事公開日:2025年04月18日
・記事タイトル:円滑移行を支えたその技術力 製造業の基幹システムを「次世代仮想化基盤」で刷新
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